●泊食分離へ
宿泊と食事をセットにしない「泊食分離」スタイルの宿が人気だ。
旅館・ホテルの温泉や部屋といった設備は利用したいが、
食事は外で好きな料理を食べたいという層に受けている。
観光地の魅力を高める試みとして、各地の温泉で導入の動きが広がってきた。
日本旅行が3月31日までの期間限定で取り扱いを始めたツアー商品
「赤い風船 鬼怒川温泉 季(とき)の宿」は
鬼怒川温泉(栃木県日光市)地区で、
同社が初めて扱う「泊食分離」を織り込んだプランだ。
宿泊のみ、または1泊+朝食というスタイルが選べる。
鬼怒川の料理をホテル外で楽しみたい向きには魅力的な選択肢だ。
宿内で食べるプランでも、部屋、食事をいくつかの選択肢の中から選べる。
部屋の種類と食事が一通りに固定されていないので、
泊まる側が好みのプランを自由に組み合わせることができる。
これまで同社が鬼怒川で販売してきたのは、
部屋と食事をセットにしたプランだけで、泊まる側のチョイスの幅が狭かった。
宿泊先の候補はあさや、鬼怒川ホテルニュー岡部、鬼怒川パークホテルズ、
鬼怒川グランドホテル夢の季、鬼怒川温泉ホテル、鬼怒川グリーンパレス
の6ホテル。
例えばあさやでは、部屋は3タイプ、
夕食は「和洋中ブッフェ」「和彩懐石 扇」「京風懐石 湯坂」の3種類を
自由に組み合わせて構わない。
泊まった翌日の食事は朝食バイキングか昼食(幕の内弁当)かを選べる。
ゆっくり朝寝して朝食はパスし、
移動しながら弁当を食べるといった組み立てもできるようになった。
静岡県浜松市の舘山寺温泉では、「泊食分離」のプラン
「きょうのごはんはドッチ!」を2月末まで試験実施している。
ウナギ料理や割烹、すし、バイキングなどの食事と、
5ホテルを組み合わせて選べる。
「仙台の奥座敷」として名高い秋保温泉(仙台市)でも
「泊食分離」の実験「牛たん温泉秋保スタイル」が始まった。
3月31日までの平日に利用できる。
参加旅館は岩沼屋、奥州秋保温泉 蘭亭、篝火(かがりび)の湯 緑水亭、
伝承千年の宿 佐勘、ホテルニュー水戸屋、ホテル華乃湯。
夕食に市内の牛タン専門店を使える。温泉周辺の飲食店も参加している。
同じ仙台市の作並温泉は5旅館・ホテルが参加して3月31日まで
「そと湯そと飯 作並温泉五館共同企画」と銘打った実験を始めた。
宿と外部の飲食店を組み合わせるのではなく、
各宿内の夕食プランと組み合わせた。
A旅館に泊まって、夕食はB旅館といった組み立てが可能だ。
「もちろんお風呂も五館分楽しめます!」とうたい、
温泉選びの幅が広がる点も売り物にしている。
同じ旅館に続けて泊まる場合は料金を割り引くサービスも採り入れた。
2泊目は1泊朝食付き料金または室料から20%、3泊目は30%、
4泊目は40%、5泊目は50%割り引く(宿によって室料のみの場合もある)。
四季リゾーツの「泊食分離」型ホテル、
「四季倶楽部 強羅スタイル」(神奈川県箱根町)
「365日いつでも、一泊朝食付で5250円」。
三菱地所の社内ベンチャーから生まれた四季リゾーツが掲げるコンセプトだ。
四季リゾーツは「泊食分離」型ホテル「四季倶楽部」シリーズを
15施設運営している。
客室稼働率は年平均で約90%、リピート率も50%を超えるという人気ぶりだ。
その一つ、「四季倶楽部 強羅スタイル」(神奈川県箱根町)は
企業のエグゼクティブ専用保養所を再生した。
基本的には夕食は付かないが、事前に申し込んでおけば用意してもらえる。
「第31回 プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で総合13位に選ばれた、
山代温泉のホテル百万石(石川県加賀市)は素泊まりができるプランを
用意している。
日本を代表する温泉街、別府では、創業100年近い歴史を持つ
亀の井ホテルが素泊まりプランを、
大型ホテルとしては早くから採り入れて成功している。
「泊食分離」は旅館・ホテルにとっては食事分の収入が目減りするという
デメリットがある反面、部屋に食事を運ぶ人件費や調理部門のコストを
削ることができ、全体として利益率を高める効果が期待できる。
観光地全体としては客が街をめぐる結果、街全体がうるおい、
観光客1人当たりの総消費額も増える可能性がある。
泊まる側からすれば、
「温泉は魅力的だが、食事は外の方がおいしそう」という場合に、
宿と食事の「いいとこ取り」ができるのがありがたい。
食事時間の制約がなくなれば、行動の幅も出る。
食仕込みの宿泊料金には
「どこまでが宿代で、いくらが食事代かはっきりしない」
という不透明感が指摘されており、
「泊食分離」であれば納得して支払いやすくなるという利点もある。
(参照:ホテル業界ニュース)


